パーク・ハイム狛江では幸い台風19号の被害はありませんでしたが、ここに住む以上は多摩川がどんな状況だったかは気になります。そこで台風通過前後の多摩川や周辺の様子をまとめました。
パーク・ハイム狛江から見た多摩川と台風への対応
12日11時30分。早朝から降雨が続き、多摩川には濁った水が流れ、水位は通常よりも高くなっています。対岸の登戸側では小田急下の河川敷が水没しているように見えます。上流の小河内ダムでは、台風による貯水量増大を見込み、前日11日14時より余水吐からの放流を始めていました。ちなみに1974年の多摩川決壊はこの小河内ダムの放流量が増大したことが原因の一つでした。
14時30分。水量はさらに増え、狛江側の河川敷にも濁流が流れ込んできました。管理組合理事会/防災対策チームではこの状況を見て、16時頃に「低層階の方は身の危険を感じたら上層階へ」という注意喚起の全館放送を行いました(放送内容はこちらの記事に掲載)。パーク・ハイム狛江では、大地震が発生しても建物は丈夫で安心であると想定し、自宅が無事な場合は避難所には行かずに自宅で待機するようにとこれまで呼びかけていました。水害の場合どうするかはあまり話し合っていませんでしたが、遠い避難所へ行くリスクよりも、同じ建物の上層階へ避難したほうが安全と判断しました。
16時30分。台風はまだ東海地方の沖合を進んでいましたが、河川敷の低い部分は完全に水没してしまいました。14時30分の画像と比べると、河川敷の先端にあった樹木のうち、上流側の2本が流失してしまっています。この頃上流の石原観測所ではん濫危険水位を超えたとして、パーク・ハイム狛江がある東和泉3丁目地区などに避難勧告が発令されました。
河川敷に水が回り込む様子のタイムラプス(間欠撮影)動画です。時刻表示は目安で、正確なものではありません。あっという間に濁流が河川敷を飲み込み、先端にあった樹木2本は16時過ぎに相次いで流されています。
暗くなってから防災対策チームメンバーが外に出たところ、警戒中の消防署の方から「水位の変化は予測できないが、土のうがあるなら準備しておくに越したことはない」とアドバイスされ、理事会/防災対策チームメンバーで備品の吸水式土のうを準備し、1号棟と3号棟の電気関係の部屋のドアの前に置き、万が一に備えました。
21時40分。台風は少し前に通過し、雨風ともほとんどやみました。しかし多摩川の水位は依然高く、轟音をたてながら川幅いっぱいの激しい流れで、河川敷先端にあった樹木は最後の1本以外、すべて流されてしまいました(最後の1本もこのあと流失しました)。
翌13日1時頃、東和泉3丁目地区の避難勧告は解除となりました。猪方・駒井町の一部は引き続き避難勧告発令中で、6時15分になって解除されました。
上は当日前後の水位の変化を示したグラフです。国交省が設置している調布の石原水位観測所は、多摩水道橋の一つ上流にかかる多摩川原橋付近にあります。朝7時頃から急激に水位が上昇し始め、14時には過去最高水位を超え、16時にははん濫危険水位に達しました。その後も水位の上昇は続き、ピークは雨がおさまった22時頃とみられます(22時はこの観測所のデータがないので、前後の観測所データから推測)。はん濫危険水位を下回ったのは翌朝5時頃でした。
翌朝7時半。快晴の朝を迎えると、変わり果てた姿の河川敷がパーク・ハイム狛江前に広がっていました。グラウンドは表土がすっかり持っていかれ、緑の広場から砂利の河原に。樹木があったあたりは高水敷ごと持っていかれ、狭くなっています。下流側の柳の大木も一部なくなってしまいました。まだ水位は高く、登戸側の河川敷は見えません。
激しい濁流で河川敷の先端が洗われ、樹木がなくなり後退した部分は崖になっています。
多摩川の水位はどのくらい上がったのか
かつてない高水位を記録した多摩川。では、実際に水は堤防のどのあたりまで上がっていたのでしょうか。
水がどこまで上がったかは、土手の側面に付着している枯れ草でわかります。パーク・ハイム狛江周辺でいちばん低いと思われる、3号棟南東角の地区センター交差点付近で、あと2mくらいというところでしょうか。その下流側、自由ひろばや決壊の碑へと続く一段高い高水敷は冠水を免れました。(→10月27日訂正記事:自由ひろば下流端には冠水の跡あり)
小田急線交差部付近はもともと踏切があった関係で堤防が若干高く、さらに余裕がありました。
上流側に移動して、多摩水道橋より上の区間を見てみました。このあたりもパーク・ハイム狛江前と同じくらいの位置に跡がありました。
多摩川の流路
多摩川の水が流れる方向についても知っておきましょう。上は狛江市のハザードマップです。多摩川のどちらの岸にも赤い線で囲った部分(赤矢印の部分)があります。この部分は「家屋倒壊等氾濫指定区域(河岸侵食)」を示しています。つまり氾濫流で土手が侵食され、崩れてしまう危険性が考えられる区域ということです。
パーク・ハイム狛江付近の多摩川はまっすぐではなく、上流側から見て右にカーブしながら流れています。すると川の流れのエネルギーはカーブの外側である登戸駅側のほうに強く働き、河川敷や土手に当たる水流が強く、逆にカーブの内側であるパーク・ハイム狛江側は水流が弱いということになります。その結果、パーク・ハイム狛江前の河川敷は広くなっています。
このことからパーク・ハイム狛江付近は「家屋倒壊等氾濫指定区域(河岸侵食)」に指定されていないものと思われます。
このあたりの堤防は各地に甚大な被害をもたらした今回の台風でも十分私たちを守ってくれていたことがわかりましたが、上流のダムがさらに放流量を増したり、大雨が降り続けたりしたらどうなるかわかりません。上流部での越水や決壊で冠水してしまうことも考えられますので、大きな台風が来る前には十分な準備をしておいくことが大切です。