2019年台風19号の影響のまとめ(4)

川崎市の多摩川沿いの被害

NHKニュースより
テレビ朝日「報道ステーション」より
(右上サブタイトルは(3)で書いた世田谷区玉川のこと)

川崎市高津区の多摩川沿いとして報道された映像では、道路沿いのコンクリート壁から水がザブンザブンと押し寄せ、冠水した道路はみるみる水没していきました。

川崎市高津区久地・溝口周辺 (国土地理院10月13日撮影)

これは多摩川に流れ込む、支流の平瀬川があふれたもので、上の写真の水色に着色した範囲(おおよそ)で冠水被害があり、不幸なことに1階が水没したマンションでは男性1名が亡くなってしまいました。

川崎市高津区久地・溝口周辺 (国土地理院10月13日撮影)

水量が非常に大きくなっている多摩川に小さな平瀬川が流れ込むと、勢いがある多摩川の流れに反発され、平瀬川から多摩川に出ようとする水は逆流のようになって行き場を失い、あふれ出てしまったものと思われます。テレビ朝日では「バックウォーター現象」と説明していました。

冠水した地区は平瀬川と久地霞堤(くじかすみてい)というものに囲まれています。そのためあふれた水が低い土地の方へ流れることもできず、大きな被害が出てしまったのでしょう。

Googleマップより

霞堤というのは武田信玄が考えたとも伝えられている、古くからある治水法で、連続している堤防の一部を切って、下流側の堤防だけ川幅よりも広く斜めに延ばしておき、水量が増えすぎた場合にその水の一部を堤外に逃がし、堤防の決壊を防ぐものです。霞堤がある場所は農地など人が住まないところでしたから、人的被害は出さずに、逃した水は本流の水量が少なくなったら自然に戻るという合理的な構造になっていました。

わざと堤外に水を逃がし、本堤の決壊を防ぐ霞堤

霞堤は現在も全国各地で見られますが、多摩川ではここのほかに昭島に残り、宿河原付近でも川から離れたところにそれらしき痕跡が残っています。しかし人家ばかりになってしまった現在は、逆に今回のように冠水被害の原因の一つとなってしまったようです。

NHKニュースより

川崎市では中原区でも武蔵小杉駅周辺が冠水しました。被害は道路だけでなく、駅の構内や周辺の店舗や住宅にも及びました。すでに報道でご存知のことと思いますが、地下の電気室が水没し、エレベーターが動かず、下水処理ができずトイレも使えなくなったというタワーマンションもあるようです。復旧には1週間程度かかるとのことで、居住者はたいへんな思いをされていることでしょう。

この武蔵小杉駅周辺の冠水は多摩川が直接の原因ではなく、暗渠や下水道から吹き出した水だったということです。(→10月27日訂正記事:多摩川の水の逆流が原因か)

4つに分けて台風19号のまとめをしました。多摩川のような大河川が近くにあると、洪水といっても色々なパターンがあることがわかりました。

多摩川の真横で暮らす私たちはこれを一つの経験として記憶に刻んでおくべきです。防災対策チームでも水害対策にいっそう力を入れてまいりますので、今後も皆さまのご理解、ご協力をお願いいたします。

※本文中、冠水の原因に関する記述は推測であり、事実と異なる場合もありえます。

その後の訂正と追加記事に続く